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1 出会い

ผู้เขียน: 内藤晴人
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-31 18:30:00

 闇の神殿は、常闇を生み出すため地下にあった。

 その常闇の中に、まるでひと目を避けるようにしてその女性はいた。

 彼女は、闇の巫女としてこの神殿に送らてきた。

 深淵の闇に仕える存在、そう言えば聞こえは良いが、いわば闇に捧げられた『供物』だった。

 何故彼女が選ばれたのか。

 その理由は簡単である。

 彼女は明らかに、他の人々と異なっていたからである。

 聞こえてきた背後からの足音に、彼女は身を硬直させる。

 それに呼応するように、回廊から明かりが漏れてきた。

 彼女は身を強張らせたまま、冷たい石の床に膝をつき深々と頭を下げる。

 身につけた装飾品の立てる音も聞こえぬくらい、彼女は緊張していた。

 足音が、不意に止まる。

 未だ頭を垂れたままの彼女は、固く目を閉じていた。けれど……。

「どうした? そのように震えて? 」

 突然声をかけられて、驚きのあまり彼女は思わず顔を上げた。そして、小さく悲鳴を上げて後ずさる。

 そう、そこには片膝をつき彼女と目線を合わせようとしていた闇の神ベヌスの姿があったからだ。

「も……申し訳ございません……わたくしは……」

 消え入りそうな小さな声で言いながら、彼女は先程よりもより深々と頭を垂れる。

 その様子を見ていたベヌスは小さく吐息をつくと、 苦笑を浮かべながら言った。

「謝ることはない。それよりも、そんな調子では話もできぬ」

「恐れながら、わたくしは卑しい巫女……神に捧げられた供物でございます。偉大なる闇の神と言葉をかわすなど……」

 彼女のその言葉に、ベヌスはさも面白くて仕方がないというように笑みを浮かべる。

 そして石畳にどっかりと腰を下ろした。

「現にこうしてかわしているではないか。吾が許す。顔を上げろ」

 一瞬の沈黙。

 意を決したのだろうか、彼女は恐る恐る顔を上げる。

 手にした燭台の明かりに照らし出されたその顔を見たベヌスは、思わず息を飲んだ。

 癖のない髪は腰まで届き、その肌は抜けるように白い。

 控えめに言っても美しいその顔に輝く瞳の色は、この闇の領域では極めてまれな澄んだ青色。  

 その耳の先端は長命種の血をひくことを示すように、僅かに尖っている。

 なるほど、とベヌスは思った。

 彼女はこの度の即位に際して、人々からの感謝と祝意を表す『供物』。

 おそらくこの稀有な容姿ゆえ、闇の神たる自分に捧げられたのだろう。

 おもむろにベヌスは立ち上がり、燭台の炎を壁に据え付けられた油皿へと移していく。

 闇に包まれていたその空間は、またたく間に柔らかな光に包まれた。

 驚いたように周囲を見回す女性に向かい、ベヌスはわずかに苦笑を浮かべながら言った。

「吾は闇の神なれど、光を必要としないということではない。何よりそなたが困るだろう? 」

 瞬間、女性の顔に驚いたような表情が浮かぶ。

 だが、すぐに恐縮するように頭を垂れた。

「滅相もございません。わたくしにお気遣いなど不要にございます」

「では、この常闇の中で、そなたは吾のために何ができる? 歩くこともままならぬであろう?」

 一瞬の沈黙の後、女性は恐る恐るとでも言うように口を開いた。

「恐れながら、わたくしは生きていても宜しいのでしょうか?」

 予想外の言葉に、べヌスは訳がわからないとても言うように首を傾げる。

「何を言い出すかと思えば……。では問うが、何故そなたが死なねばならぬ?」

「わたくしは、巫女という名を借りた、神に捧げられた贄(にえ)にございます。当然この命は偉大なる闇の神である貴方様に……」

 思いもかけない言葉に、べヌスは女性をまじまじと見つめる。

 だが、これでようやく何故彼女があんなにも震えていたのか合点がいった。

 再びべヌスは女性の前に腰を下ろすと、努めて穏やかな口調で告げた。

「安心しろ。取って食おうなどということはせぬ。吾はただ……」

 その言葉は、不意に途切れた。

 思えば、同じようにこの神殿に送られてきた人が幾人もいる。

 そのほとんどが短命種の『ヒト』であり、彼らはベヌスよりも先にその生を終え、その度悲嘆にくれていたという記憶が蘇ったのである。

 そう、彼は闇を統べる神。

 只人よりも遥かに長い時を渡ることが可能なのだ。

 か弱く儚げでそして美しいこの女性も、長命種の特徴を持っているとはいえ、ベヌスよりも先に逝ってしまうのは明白だった。

「……いかがなさいました? わたくしが何か気に触ることを申し上げましたでしょうか?」

 女性の声に、ベヌスは我にかえる。

 不安げな表情を浮かべこちらを見つめる女性に、べヌスは笑ってみせた。

「大事ない。かつてあったことを思い出したまでだ。そなたが気にすることではない」

 その言葉に、わずかながら女性の顔がほころぶ。

 初めて見るその微笑は、美しくはあったがやはりどこか儚げだった。

 瞬間、彼は今までに感じたことのない揺らぎを覚えた。

一体この感情は何なのか。

 けれど、それを気取られぬように一つ咳払いをすると、彼は改めて女性に尋ねた。

「しかし、何故そのような……吾が巫女を喰らうなどという話になるのだ? この通り……」

 言いながら、べヌスはぱちん、と指を鳴らす。

 と、奥から足音が聞こえてきた。

「お呼びですか、主(あるじ)様? 」

「何か御用でしょうか? 」

 口々に言いながら、壮年の女性と青年が姿を現す。

 その姿を驚いたように見つめる新たな巫女に、ベヌスは笑いながら言った。

「彼らは吾のそばに仕えてくれる者たち……いずれもそなたと同様、この闇の領域の各地から送られて来たのだ」

 この通り、皆よく仕えてくれている。

 そういうベヌスを女性はしばらく見つめていたが、唐突にそのまぶたが落ち、上半身は力なく石畳に崩れ落ちた。

「おい、どうした? しっかりしろ!」

 驚いたようにベヌスは声を上げると、倒れ付す女性の肩を揺さぶる。

 しかし、一向に目覚めようとしない女性を抱き上げると、そこに控える従者をかえりみる。

「空いている部屋はあるか? この者を休ませる」

「かしこまりました、こちらへ」

 青年が立ち上がり、先に立って歩き出す。

 その腕に女性の温もりを感じながら、ベヌスは思った。

 このか弱い存在を守りたい、そして心からの笑顔が見たい、と。

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